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#21❝飽きる美学❞

#21 “飽きる美学”

 横尾忠則が85歳から88歳までのエッセイをまとめて本にしたエッセイ集「飽きる美学」の中で本の中身は内緒話と言っているが、決して内緒話なんかではない、アーティストの寝言と聞いてくださいとも言っているが寝言とも違う、彼の生の言葉がしっかりと綴られている。彼は芸術はインファンテリズム(幼児性)がないとだめだと言っている、つまり人生からワクワク、ドキドキが消えてしまうとそれに代わって人生を理屈にすり替えてしまい、遊び心を失ってしまう芸術にとってこの遊び心が一番大事であって、大人になりたくない症候群も多少あってもいいのではないかと言っているのだろう。自分を越えたいと思う気持ち、自分の中に眠っている能力、自分がまだ見たこともない自分の力、いつもそんなことを考えている、信仰をすることも、そんな欲望を満たしたいと思っているのかもしれないから彼は自分の信仰は芸術であると、芸術の中に神仏が宿っていると記している。芸術とは自分にとって自己満足を満たす作品を創作すること、その創作は「成るように成る」という生き方、つまり生活者としての生き方、表現者としての生き方が共に「成るように成る」作品を生み出すことになると言っている、言い方を変えれば彼流の楽観主義なんだろう。彼の商業デザイナーから絵描きの世界に転身した経歴から彼の人生を眺めてみると、、芸術の世界に宿っている自分の中の神仏を見てみたかったのかもしれない、横尾は自分の力を信じていたからこそその力を確かめてみたかったんだろうと思う、一流のデザイナーの地位を捨てて芸術の世界に迷い込んでいったかれの生き様が分かる気がする。人間は今までやってきた仕事、ましてや社会から大きな評価をうけて脂がのっている。そんな時に、地位や、名誉を捨てて新しい世界に挑戦していくことは、普通で考えれば、不安や、迷いやそんな自分との葛藤を乗り越えて進んでいかなければならないと思う。当然大きな勇気があってその勇気が自分の背中を押していくのだろうが、それ以上に自分を信じる力が大きく自分を励ましてくれてるのだろう。

建築家 川嶌 守

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